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役者で翻訳家、通訳にして撮影コーディネーター 日本映画界に新風を巻き起こす外国人はこの人!

東急世田谷線松蔭神社前駅でクリスチャン・ストームズと待ち合わせた。翻訳家で俳優。現場通訳を手掛け、撮影コーディネーターもこなす。そのマルチな才能を活かし、日本映画界から注目を集めている人物だ。「松蔭神社前には7年間くらい暮らしてました。この街の事はなんでも知ってるよ」と流暢な日本語で話す。通りを歩いていると、肉屋の店主やクリーニング屋の女将が「クリス、おかえり」と声をかけてくる。映画界で活躍する彼のもう一つの顔は、下町に溶け込む気さくな日本人っぽいアメリカ人なのだ。誘われるがままに入ったレンタルビデオ店『ショウイン』では、「よくここでビデオを借りて、翻訳の勉強をしました」と懐かしそうな笑顔。向かいの仕立屋では、UKバンドのPV撮影をさせてもらったこともあるとか。バンドオリジナルのTシャツを持参し、店主の小父さんと昔話に花を咲かせていた。

christian storms actor

クリスは現在日本屈指の実力派翻訳家である。50本を超える翻訳を手掛けたが、最近では『スクールデイズ』(守屋健太郎監督)や『少年A』(三池崇史監督)など国際映画祭出品作品の英語字幕版制作にも尽力。さらに『アニマトリックス』の企画翻訳や『サウスパーク』の英和翻訳、『8マイル』ラップ部分の日本語字幕監修なども彼の手によるものだ。「字幕は要約や翻訳じゃなくて台詞にしないとダメ。"リアルな言葉"っていうものに一番気をつけています。例えば『恋の門』(松尾スズキ監督)に出てくるOTAKU(オタク)やCOSPLAY(コスプレ)も、実際に言葉を使うアメリカ人やマーケットがあればそのまま使う。分かりやすくしすぎるのもいけないので」。その土地の環境や歴史、人の経歴なども重要視するところ。日本語の"なまり"を英語で表現できるのは、彼だけではないだろうか。

christian storms director

昨年公開された映画『殴者』でクリスはイギリス人悪徳商人を演じきり、高評価を受けた。「演技と翻訳は一緒。登場人物のバックグラウンドを考え話し方を決める。英語字幕をやるときは演じているみたいなものだしね」。台詞はすべて日本語だった。日本語能力試験1級、上智大学卒業後、笹川良一平和財団に所属していたこともあり、日本人でも知らない裏話が次々と飛び出す。広い視野と知識欲、モチベーションが彼の武器だ。「最近三池崇史監督『IMPRINT』(2006年DVD発売予定)の撮影に現場通訳として参加して、毎日20時間とか働いたけど、ギャラはいらないくらい勉強になった」という。そんな彼の夢は日本映画の監督。「2週間くらい休んで台本を一気に書き上げたい。日本を舞台にした映画で日本のいいところを見せていきたいよ」。これは今までにない"日本映画"が期待できるはずだ。世間を賑わすこのマルチな男には、カスタム自由なV804SHが似合う。

<クリス情報>

翻訳:『スクールデイズ』(守屋健太郎監督)、『真夜中の弥次さん喜多さん』(宮藤官九郎監督)、『牛頭(GOZU)』(三池崇史監督)、『恋の門』(松尾スズキ)などの和英翻訳、『シュレック』『サウスパーク』などの英和翻訳。俳優:2005年公開『殴者(http://www.nagurimono.com/)』出演中、2006年10月公開『パビリオン山椒魚(http://www.stylejam.co.jp/production/salamandre.html)』(主演:オダギリジョー、香椎由宇に出演予定。通訳:マスターズ・オブ・ホラー(http://www.moh13.jp/)三池崇史全米デビュー『IMPRINT』現場通訳担当。

<プロフィール>

クリスチャン・ストームズ くりすちゃん・すとーむず インディアナ州立大学日本文化部日本語学科/経済学科卒業後、1990年に来日。上智大学比較文化部入学。卒業後、笹川平和財団や映画制作会社、漫画翻訳者などを経験し、映像の道へ。映像翻訳を幅広くこなす傍ら、演技も勉強し、俳優としても活躍。取材当日は松陰神社前の商店街を歩きながら「あそこの店のから揚げがおいしい」、「この店の主人から娘が使う歩行器を譲ってもらった」などユニークな話をしてくれた。携帯の壁紙に3歳になる一人娘マヤちゃんの写真を発見。クリスの本当の素顔は一児のパパである